この記事で伝えたいこと
・3Dモデルと実機は必ずしも一致しない
・公差やフレキシブル部品など、3Dでは表現しきれない要素がある
・設計者は現物を確認し、設計へフィードバックする姿勢が大切
3Dモデル=実機ではない?
あなたは、3Dモデルどおりに製品が仕上がらず、トラブルが発生した経験はありませんか?3Dモデル上では問題なかったのに、実機では部品同士が干渉したり、締結用の穴が合わなかったり、ホースや配線が想定した経路を通らなかったりすることがあります。開発の終盤でこうした問題が見つかると、改造や部品の追加手配、生産調整、再設計に追われることも少なくありません。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。今回は、「3Dモデルどおりに製品はできない」というテーマについて、3Dモデルと実機の違いを踏まえながら、設計者として大切にしたいことを考えてみたいと思います。
なぜ起きるのか
あくまで一例ですが、以下のようなことが考えられます。
公差・遊び
3D上で検討した部品やアッセンブリは、設計寸法どおりにモデリングでき、部品同士の締結も穴中心ピッタリで配置できますよね。では、実際の部品の寸法は全くその通りなのでしょうか?例えば、鉄板部品の図面には100mmと記載していても、実際は100.3mmだったり99.5mmだったりします。このような設計寸法と実寸法の違いは、加工公差によって生じます。また、部品同士の締結においても組立性を確保するために、ボルト穴には適切な「遊び(クリアランス)」を設けます。例えば、M8のボルトが入る穴径は、少し余裕を持たせてφ9に設定したりしますよね。実際の組立では、穴の遊びの中でボルト位置が決まるため、部品同士が常に穴中心で固定されるとは限りません。これが組立時の寸法のバラツキとなります。このように、部品単体あるいは組立時の寸法のばらつきが積み重なることで、製品が完成したときに、3Dモデルとは異なる状態になります。
フレキシブル部品の性質
フレキシブル部品とは、外力や周囲の部品との関係によって形状が変化する部品です。ここではホース・チューブ・配線等を指します。このような部品は、3Dモデル上では、固定点同士を理想的な曲線で結んだ形状になりますが、実機では思った形状にならないことがあります。その理由の一つが3Dモデルと実機の剛性の違いです。ホースの剛性が想定より高ければ曲げRは大きくなり、逆に剛性が低ければ曲げRは小さくなります。さらに、自重によるたわみや長さの公差、製造時のうねり・ねじれなども加わり、3Dモデルとは違った経路になります。
発生事例
私が経験した実例をいくつか紹介します。
ボルトの緩み
サポートに重量部品をボルト締結する際の話です。対象となる重量部品の固定にはボルトの軸力を一定以上確保する必要がありました。3Dモデル上では重量物とサポートがピッタリ平面で合わせられる前提でしたが、実機はそうではありませんでした。サポートは溶接部品であるため、溶接ひずみによって締結面に反りが生じていました。結果、ボルトの軸力を基準以上に確保することができず、ボルトの緩みが発生しました。設計レビューでは締結面を平面であるということを前提に、軸力の計算結果を提示していましたが、溶接ひずみまでは十分に考慮できていませんでした。
エアチューブの干渉
製品のエア配管用ナイロンチューブを配策設計した際の話です。チューブ周辺には様々な部品がひしめき合っており、チューブとの隙間に余裕が無い状態でした。チューブの配策においては3Dモデル上で設定されている特性値を利用しました。しかし、実際の部品の剛性は3Dモデルよりも高く、加えて、チューブの長さは製作時に+公差で製作される傾向がありました。その結果、3Dモデルと比較すると、実機のほうがホースの曲げ部分が膨らんだ状態となり、チューブと周辺部品の干渉が発生しました。今回のケースでは3Dモデルの形状だけを信頼し、実際の部品ばらつきまで十分に考慮できていませんでした。
どのように3Dモデルを用いた設計に取り組むべきなのか?
私は3Dモデルを信頼しすぎないことが重要だと考えています。部品単体には必ず加工公差があり、製品には組立時のばらつきがあります。また、ホースや配線などのフレキシブル部品は、実機では3Dモデルどおりの形状になるとは限りません。対象の部品がどのような素材で、どのような加工や組立を経て製品になるのかを考えることで、設計時に確認すべきポイントが見えてくるはずです。
まとめ
3Dモデルどおりに製品ができないというのは、決して珍しいことではありません。今回紹介した事例はあくまで一例であり、取り扱う製品によって原因はさまざまです。時間やコストの制約から、机上ですべてを検証することは現実的ではありません。だからこそ、設計や試作の段階では積極的に現物を確認し、その結果を次の設計へフィードバックすることが重要です。3Dモデルは設計を進めるうえで非常に有効なツールですが、公差やばらつき、材料特性など、モデルだけでは表現しきれない要素も存在します。3Dモデルを「完成形」ではなく、より良い製品をつくるためのツールとして活用することが、設計者に求められる姿勢だと私は考えています。
